philosophy

斎藤環「戦闘美少女の精神分析」

テレビアニメのシリーズが切り替わる時期に、次の放映予定アニメを一覧したウェブサイトをチェックすることがある。Gigazineとか。一望すると、いま製作されているアニメの傾向がわかるのでおもしろい。いつのシーズンだったか忘れたが、空から女の子が降っ…

杉浦勉「霊と女たち」

スピリチュアルなんて言うといかんせん胡散臭いし、フェミニズムなんてのもついつい敬遠してしまう。それなのにこの「霊と女たち」、書店帰りに立ち寄った日曜のSTARBUCKS COFFEEで、ワンシッティングで読了してしまった。面白いなあ。異端審問とか伝奇とか…

ジャン・ボードリヤール「完全犯罪」

Jean Baudrillard「The Perfect Crime」 この本をわたしに薦めた友人は、ほとんど推理小説を読まないのらしい。そんな彼に推理小説を1冊薦め感想をきいたところ、思いもよらない返答があった。ミステリの原則である、一番重要なことを最後の最後まで隠蔽して…

クロード・レヴィ=ストロース「野生の思考」

Claude Lévi-Strauss「The Savage Mind」 フランス語の原題は「La pensée sauvage」、penséeは草花のパンジーと思惟思考の両方を意味するのだそうだ。この本がはじめて出版された1962年当時はまだ、オーストラリアやアメリカの先住民族に対する視線には偏見…

田中純「都市の詩学」

暗闇でつぶやくように喋る声と、スクリーンに投映されるいくつものイメージ。今はもう取り壊された大学図書館の講堂で、結局、学期の最後まで講義に通いつづけた数人の中に、私は含まれていた。期末評定の対策を質問してきた見知らぬ受講仲間に答えたとおり…

ジル・ドゥルーズ「フーコー」

Gilles Deleuze「Foucault」 読みながら何よりも思ったのは、ドゥルーズはフーコーのことが本当に好きだったんだな、ということ。本文中で何回もドゥルーズはフーコーの論考のそれぞれを「美しい」という主観的なことばで賞賛する。物語でもないし形而上学に…

雑賀恵子「エコ・ロゴス」

……ともかく、人間存在の昏く根源的なところを揺さぶるおぞましさを、近代理性は、徹底的に退け、あるいは明るみのなかに引きずり出して馴化しようとしてきた。したがって、殺人は、刑法の体系のなかに属するが、食人の罪状は刑法には存在しない。自然─動物と…

ジル・ドゥルーズ「スピノザ」

Gilles Deleuze「Spinoza : Practical Philosophy」 ドゥルーズは、学位論文「差異と反復」の副論文としてスピノザ論「スピノザと表現の問題」を提出した、というくらいに哲学の出発点をスピノザに負うところが大きかったらしい。「資本主義と分裂症(アンチ…

Jean Baudrillard「The Spirit of Terrorism」

ジャン・ボードリヤール「パワー・インフェルノ」収録 Sometimes I suddenly notice that there are many diffrent types of people around us even in Tokyo, who have diverse religeon and custom. Today I saw one kosher food outlet nearby have finis…

プラトン「国家(下)」

これがどんな本だったのかが、最後まで読んでようやく分かった。 プラトンの「国家」は、かなり美しい形でひとつの論理空間としての「国家」を生み出している。暴論を含むし、現実性に乏しいし、重要な事柄の捨象も激しい。でも、この論が存在する平面上にお…

プラトン「国家(上)」

カフカで法とか掟とか、それの実践についてぐるぐる考えて、ああそういえばプラトンの「法律」が書棚にささってるはずだった、終わったら読んでみるの悪くないかも、とか思ってたらどっこい「国家」のほうでした、3ヶ月前に推薦されたのは。超超超古典、教養…

マルト・ロベール「カフカのように孤独に」

Marthe Robert「As Lonely As Franz Kafka」 カフカ論。 チェコ在住のユダヤ人が、ドイツ語で小説をかく。フランツ・カフカはチェコ人ではなかったから、近隣各国に蹂躙されていた当時のチェコに対する思いは、チェコ人たちほどには彼の心を占めない。また、…

ジル・ドゥルーズ+フェリックス・ガタリ「千のプラトー 資本主義と分裂症」

Gilles Deleuze + Félix Guattari「Mille Plateaux」 「千のプラトー」を漸く読了。「アンチ・オイディプス」の続編だが既読であることを前提にしていない、と謳ってはいるものの、全体的に論の抽象度がかなり高くて、かつ具象から抽象への飛躍が一息でおこ…

ジル・ドゥルーズ+フェリックス・ガタリ「カフカ マイナー文学のために」

Gilles Deleuze + Félix Guattari「Kafka: Toward a Theory of Minor Literature」 未読の「アメリカ(失踪者)」を加えて「訴訟(審判)」「城」の三作品(Kの物語)を読もうかなということで、かなり大回りの迂回路を通っている最中。カフカはフェリーツェ…

ジル・ドゥルーズ+フェリックス・ガタリ「アンチ・オイディプス 資本主義と分裂症(下)」

Gilles Deleuze + Félix Guattari「Anti-Oedipus」 ドゥルーズ+ガタリによる、フロイトを全面批判する論文。彼らは勿論、フロイトの偉大な功績は褒め讃えるけれど、彼が産み落としてしまった胤の罪深さ、彼の後継者たちを陥れた罠を、根本から批判している…

ジル・ドゥルーズ+フェリックス・ガタリ「アンチ・オイディプス 資本主義と分裂症(上)」

Gilles Deleuze + Félix Guattari「Anti-Oedipus」 別の本のタイトルでドゥルーズが「critic and clinic」などと楽しげに述べているとおり、精神分析に関係する批判にはやっぱり臨床はつきものでしょ。という訳で、さあ診察室のソファに座ろうか。……最近、と…

フェリックス・ガタリ「カフカの夢分析」

Félix Guattari「65 rêves de Franz Kafka」 「フロイトにとっては、夢は無意識の奥深い新陳代謝が記録されたものの表面にすぎなかった。……カフカは、夢のなかの意味をなさない地点をある解釈学のくびきの下におきながら、それを増殖かつ拡大させつつ、いか…

ジャン・ボードリヤール「消滅の技法」

Jean Baudrillard「L'ART DE LA DISPARITION」 ボードリヤールの写真論。たしか、造本はきれいだけど内容は薄いよ、という留保付きで借りたんだった記憶がある。たしかに、おそらく日本語訳をする上での演出なんだと思うが、文章がマニフェストじみているし…

クロード・レヴィ=ストロース、今福龍太「サンパウロへのサウダージ」

Claude Levi-Strauss「Saudades de Sao Paulo」 2008年11月28日、レヴィ=ストロースは100歳の誕生日を迎えた。あまりに偉大すぎるこの文化人類学者の生誕100年を、まだ生きている彼と共に迎えられるとは、とても喜ばしいことだ。港千尋「レヴィ=ストロース…

ミシェル・フーコー「狂気の歴史」

Michel Foucault「Madness and Civilization」 ヨーロッパに於ける中世以降フロイト以前の、狂気と人間社会との関係について論じた大著。フーコー入魂の一冊です!600ページ超の鈍器!各監禁施設の収容人員から当時の医師の所見、治療法に至るまで、史実を綿…

ジル・ドゥルーズ「批評と臨床」

Gilles Deleuze「Essays Critical and Clinical」 ドゥルーズもバートルビー論書いてるよー、ってアガンベンが言ってたので読んでみたんですが。畜生わたしはドゥルーズなんて断じて好きじゃないんだぜ、今読んでるフーコーが大著すぎなのであくまで彼はサブ…

ジョルジョ・アガンベン「バートルビー 偶然性について」

Giorgio Agamben I would prefer not to. ハーマン・メルヴィル「代書人バートルビー」において、バートルビーが雇用主の法律家に対して執拗に繰り返す台詞だ。 「しないほうがいいのですが。」 「なぜ拒むんだ?」 「しないほうがいいのですが。」 「したく…

ジョルジョ・アガンベン「スタンツェー西洋文化における言葉とイメージ」

Giorgio Agamben「Stanzas: Word and Phantasm in Western Culture」 スタンツァは、あらゆる(詩の)技法を収容するに足る小部屋もしくは容器を意味する。(ダンテ「俗語詩論」) インスピレーションを受けて詩作をすることと、ロジカルに批評を構築してい…

ジョルジョ・アガンベン「人権の彼方に―政治哲学ノート」

Giorgio Agamben「Means without Ends」 幸せになりたい。 この感情は、実際には他者への羨望でしかないと思った。明らかに幸せそうである人たちを目の前にして、彼は蚊帳の外にいる。「幸せになってほしい」「幸せにしてあげたい」というありふれた、でもあ…

ジル・ドゥルーズ+クレール・パルネ「対話」

Gilles Deleuze & Claire Parnet 「Dialogues」 まあ彼は頭が良すぎるんだよ、でもそこが彼のいいところでしょ、いやそれくらいは大目にみてやってよ。わたしがぶつぶつ不満をこぼしてるのを友人らが口々にとりなそうとするので、放置決定してたはずのドゥル…

ジョルジョ・アガンベン「瀆神」

Giorgio Agamben「Profanazioni」 帯文にこう書いてある、「仕上げたばかりのこの小さな書物において、わたしは自分にとってたいへん重要な主題について、可能なかぎり明確に述べたのです。」神への冒瀆というこのタイトルと、本のサイズが聖書に似ているの…

ジャック・ランシエール「民主主義への憎悪」

Jacques Rancière「La haine de la démocratie」 民主主義はその大前提として人間がみな平等であるが(共和主義においては平等は獲得されるべき目標でしかない)、そのことに対しては根本的な憎悪感がつきまとう。私生児や妾腹の子供に対する差別感情はもち…

ジョルジョ・アガンベン「幼児期と歴史ー経験の破壊と歴史の起源」

幼児期なんていう日本語だとずいぶん狭義になってしまうけど、インファンティア=言語活動の無い状態とそれによって産出される新たな歴史について述べた本。現代においては経験が破壊され剥奪されてしまって(卑近な例で言うと、周りの人に質問をする中で実…

ジョルジョ・アガンベン「残りの時ーパウロ講義」

新約聖書・パウロ書簡の註解書。「ローマ人への手紙」などに含まれる語彙そのものや、思想のありかたと変遷を、彼の依って立つ思想的立場から詳細に論考している。時間に関する考察が秀逸、ハイデガーとベンヤミンが主な参照元。自らの時間表象を把握するた…

ジョルジョ・アガンベン「中味のない人間」

著者が28歳のとき出版された論考集。(ってドク論みたいなもんだよなあ。スゴイ。)美学・芸術論がメインで、ニーチェ全般、ヘーゲルの美学講義、ニコマコス倫理学あたりのレファレンスが多いだろうか。さまざまな問題意識が植え付けられた、というレベルの…