2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

フラナリー・オコナー、サリー・フィッツジェラルド編「存在することの習慣」

Flannery O’Connor, Sally Fitzgerald「The Habit of Being」 フラナリー・オコナーの書簡集。フィッツジェラルド夫妻は、彼女が小説を発表する前にはほぼ必ず、事前に草稿を送り意見を仰いでいた、大切な友人だった。サリーは批評家であり、夫ロバートも文…

フラナリー・オコナー、サリー・フィッツジェラルド、ロバート・フィッツジェラルド編「秘義と習俗」

Flannery O'Connor, Sally Fitzgerald, Robert Fitzgerald「Mystery and Manners」 「……われわれのほとんどは、悪に関しては冷静に正面から見据えて、たいがいはそこにわれわれ自身のにやりとした映像を発見し、しかもその像をを素直に受けいれるやり方を心…

須賀敦子「須賀敦子全集(1)」

エッセイ集成。「ミラノ 霧の風景」「コルシア書店の仲間たち」「旅のあいまに」所収。 最初に正直に記しておくと、すでに膨大な量になっているはずの「いつかは読む著述家リスト」の中に須賀敦子の名前を加えたのは、福田和也の講談社新書「悪の読書術」を…

小川洋子「寡黙な死骸 みだらな弔い」

あまり熱のこもっていない調子で、友人がそれでもと推薦した一冊だが、その態度におおいに共感する。 完成度の高い短篇集。何気ない日常がくるりと不気味に反転する物語は、乙一を思い出す。

プラトン「国家(上)」

カフカで法とか掟とか、それの実践についてぐるぐる考えて、ああそういえばプラトンの「法律」が書棚にささってるはずだった、終わったら読んでみるの悪くないかも、とか思ってたらどっこい「国家」のほうでした、3ヶ月前に推薦されたのは。超超超古典、教養…

フランツ・カフカ「失踪者(アメリカ)」

カフカの三長編のうちの一つで、やはり未完。「城」「訴訟」では奇妙な法律/掟として描かれていたものが、「失踪者」では新興国アメリカの価値観(例えば良心より狡猾さ)として描かれている。

フランツ・カフカ「訴訟(審判)」

ある朝突然、悪事をはたらいたおぼえがないのに、ヨーゼフ・Kは逮捕された。それから1年後、31歳の誕生日の前夜、ヨーゼフ・Kは処刑された。 カフカ「訴訟」では、Kがこの1年間に囚われ続けた訴訟沙汰について、彼の生活に起こった事件についてとりまとめら…

フランツ・カフカ「城」

この冬ではじめての雪が降っている。夜が明けたら、降り止んだ雪のまぶしさで、窓の外が白んでいたらいい。 幼い頃、夜から雪が降り続いていた翌朝、雪の降りつもった明け方は、すべてのものの距離が消え失せていた。あまりの静かさは不気味すぎて、いったん…

セルマ・ラーゲルレーヴ「ポルトガリヤの皇帝さん」

Selma Lagerlöf「The Emperor of Portugalia」 自分の読書の趣味に凝り固まるのも何なので、人の薦めてくれるままの本を読むことがときどきある、ラーゲルレーヴはその一つだ。「ニルスのふしぎな旅」の著者で、女性初のノーベル文学賞受賞者。岩波文庫収録…