philosophy

ジョルジョ・アガンベン「裸性」

Giorgio Agamben「Nudities」 検察官の職権が限定的であった古代ローマの裁判において、中傷=誣告[虚偽の事実を言い立てて、他人を罪に陥れる犯罪]は司法機関にとってきわめて重大な脅威であり、偽証をした告発者は額にKの文字の焼印を捺され罰せられたほど…

ジークムント・フロイト「自我論集」

Sigmund Freud ・欲動とその運命 ・抑圧 ・子供が叩かれる ・快感原則の彼岸 ・自我とエス ・マゾヒズムの経済論的問題 ・否定 ・マジック・メモについてのノート 以上を収録。「快感原則の彼岸」の幼児の糸巻の遊びの部分をふときちんと読みたくなった。 ………

ジョルジョ・アガンベン「到来する共同体」

Giorgio Agamben「The Coming Community」 普遍的なものと個別的なもののアンチノミーを逃れているひとつの概念がずっと前からわたしたちによく知られていた。見本[esempio]という概念がそれである。見本がその力を発揮するどんな領域においても、見本の特徴…

ジャック・ラカン「エクリ2」

Jacques Lacan「Ecrits」 だからこの大きな団体に持続する統一力は、ポーの天才が「ヴァルドマール氏の場合」という怪奇小説でわれわれに考察を求めている、特異な想像力を思わせるのである。 その男は、臨終に際して催眠術をかけられ、死骸を維持したまま死…

ジャック・ラカン「エクリ1」

Jacques Lacan「Ecrits」 ・論理的問題 刑務所の所長が三人の囚人をとくに選んで出頭させ、次のような意見を伝えた。 「きみたちのうち一人を釈放することになった。その理由はいまここで言うわけにはいかない。そこで、もしきみたちが賛成するなら、この一…

ミシェル・フーコー「監獄の誕生」

Michel Foucault「Discipline and Punish: The Birth of the Prison」 ……、<近代的な>法典の立案もしくは起草、……明確に述べられた普遍的な法典や整理統合された訴訟手続規則をふくむ制度上の大変革と、この身体刑の消滅とを比較した場合、それの重要性は…

ジョルジョ・アガンベン「事物のしるし 方法について」

Giorgio Agamben「The Signature of All Things: On Method」 美的判断で考えられる必然性としては、必然性はただ範例のかたちでしか定義されえない。つまり、提示することのできない一般的な規則の範例として見なしうる一つの判断に全員が合意するという必…

ミシェル・フーコー「性の歴史1 知への意思」

Michel Foucault「The History of Sexuality Vol.1:The Will to Knowledge」 次のような反論があるかも知れぬ。言説のこのような増殖は、そこに単なる量的な現象を、単純な増大であるような何かを見ただけでは間違いであると。つまりそこで言われている内容…

アビ・ヴァールブルク「蛇儀礼(クロイツリンゲン講演)」

Aby Warburg「Images from the Region of the Pueblo Indians of North America」 アガンベンをよく読むのだが、イコノグラフィー的な領域に突入すると引用元として頻出するのがヴァールブルクだ。Warburg Instituteで研究していたのが一因なのだが。いつか…

ジル・ドゥルーズ「シネマ2*時間イメージ」

Gilles Deleuze「Cinema2:The Time-Image」 レネの第一の新しさとは、中心あるいは固定点の消失である。死は今の現在を固定しない。それほど多くの死者が過去の諸相に棲息しているのだ。……概して、現在は浮遊し始め、不確定性に襲われ、人物の往来のうちに分…

ステファヌ・ナドー「アンチ・オイディプスの使用マニュアル」

Stéphane Nadaud「Manuel à l'usage de ceux qui veulent réussir leur (anti)œdipe」 ナドーは、ガタリ「カフカの夢分析」で編者を務めた人として記憶していた。ポップ心理学popsyを批判した箇所は興味深い社会分析になっている。また「アンチ・オイディプ…

ジョルジョ・アガンベン「イタリア的カテゴリー」

Giorgio Agamben「Categorie italiane. Studi di poetica」 (「神曲」のイタリア語タイトルを直訳すると「神聖なる喜劇」となるが、)……ある本質的な問題に向かい合う姿勢を示している。つまり、神の正義を前にした人間の有罪と無罪という問題である。ダン…

ロラン・バルト「明るい部屋」

Roland Barthes「La Chambre claire」 「肖像写真」は、もろもろの力の対決の場である。そこでは、四つの想像物が、互いに入り乱れ、衝突し、変形し合う。カメラを向けられると、……奇妙な行動であるが、私は自分自身を模倣してやまないのである。だからこそ…

マルティン・ハイデガー「存在と時間(下)」

Martin Heidegger「Being and Time」 ……<ひと>は決して死にません。なぜなら、死がいつもわたしの死であり、本来的には先駆的覚悟性においてだけ、実存的に了解されるかぎり、<ひと>は死ぬことができないからです。決して死ぬことなく、終りへの存在を誤…

ジョルジョ・アガンベン「王国と栄光ーオイコノミアと統治の神学的系譜学のために」

Giorgio Agamben「Regno e la Gloria: Per una genealogia teologica dell'economia e del governo」 権威と権力の根拠について,。読み終わってしばらく経った今この本の内容を自分のことばで概括すると、そういう単語が浮かんでくる。 君主(権威)と為政者…

ウィトゲンシュタイン「論理哲学論考」

Ludwig Wittgenstein「Tractatus」 ストーンボローStonborough邸の街区をぐるりと巡った。IN ADVANCE RESERVATIONだなんて、ドイツ語オンリーのウェブサイトじゃなかなか気がつかないよね?と、同類とおぼしき旅行者を目で追いかけた。まあこんなものだ、も…

ジョルジョ・アガンベン「思考の潜勢力」

Giorgio Agamben「La potenza del pensiero: Saggi e cinferenze」 意味をはっきり知ることのないままに馴染んだ言葉や物語があって、大人になってからその意味するところを聞いた途端、不気味になって使用するのをためらうことがある。たとえば童話とか童謡…

マルティン・ハイデガー「存在と時間(中)」

Martin Heidegger「Being and Time」 ナニカについての語りはすべて、語りが語られたこと、において伝達するのですが、これはまた同時に、自分の意中を打ち明けるという性格をもっています。現存在は語りながら自分を発表するのですが、これは現存在がまず「…

マルティン・ハイデガー「存在と時間(上)」

Martin Heidegger「Being and Time」 メガネをかけているひとにとっては、メガネそのものは距離的にははなはだ近く、かれの「鼻にのっかっている」が、この使用中の道具は、かれにとっては、ま向うの壁にかかっている絵画よりも環境的には遥かに遠いのです。…

ジョルジョ・アガンベン「言葉と死─否定性の場所にかんするゼミナール」

Giorgio Agamben「Language and Death: The Place of Negativity」 ……わたしたちはそれをわたしたちが感覚的確信のなかで言いたいとおもっているとおりのままには言っていないのである。しかしながら、見られるように、言葉で表現されたもののほうが(言いた…

ヴァルター・ベンヤミン「パサージュ論(5)ブルジョワジーの夢」

Walter Benjamin「The Archades Project/Das Passagen-Werk」 都会の雨には子どもの頃を夢のように思い起こさせるという、あなどれない魅力がある。しかしそれは、大都会に育った子どもでなければわからない。雨はいたるところ気づかぬようにひっそりと降り…

ヴァルター・ベンヤミン「パサージュ論(4)方法としてのユートピア」

Walter Benjamin「The Archades Project/Das Passagen-Werk」 近代的な技術の世界と、神話のアルカイックな象徴の世界の間には照応関係の戯れがある、ということを否定できる者がいるとすれば、それは、考えることなくぼんやりものを見ている者ぐらいだ。技…

港千尋「愛の小さな歴史」

1年振りにばっさり切った髪が、予定していたノラ・ジョーンズではなく、むしろエマニュエル・リヴァ、「ヒロシマ・モナムール」の彼女に似ていることに気がついた。つまりわたしはそういう年齢であり、あの女性主人公と同じような質を持つ経験をしていたとし…

ヴァルター・ベンヤミン「パサージュ論(3)都市の遊歩者」

Walter Benjamin「The Archades Project/Das Passagen-Werk」 街路はこの遊歩者を遥か遠くに消え去った時間へと連れて行く。遊歩者にとってはどんな街路も急な下り坂なのだ。この坂は彼を下へ下へと連れて行く。母たちのところというわけではなくとも、ある…

ヴァルター・ベンヤミン「パサージュ論(2)ボードレールのパリ」

Walter Benjamin「The Archades Project/Das Passagen-Werk」 ギース論の中の讒言に見られるルソーの対蹠者としてのボードレール。「われわれが必要品と必需品の次元から抜け出て、贅沢と娯楽の次元に入り込むや否や、自然はもはや犯罪を勧めることしかでき…

ヴァルター・ベンヤミン「パサージュ論(1)パリの原風景」

Walter Benjamin「The Archades Project/Das Passagen-Werk」 室内は単に私人の宇宙であるばかりでなく、またその保護ケースでもある。住むということは、痕跡を留めることである。室内ではその痕跡が強調される。覆いやカバー類、容器やケース類がふんだん…

ヴァルター・ベンヤミン「ベンヤミン・コレクション(3)記憶への旅」

Walter Benjamin「One Way Street, Berlin Childhood Around 1900 and Other Writings」 民間の言い伝えのひとつに、夢を朝食前の空腹のときに語ってはいけない、というのがある。……この心身状態においては、夢について報告することは由々しき結果をもたらす…

ミシェル・フーコー「言葉と物」

Michel Foucault「The Order of Things: An Archaeology of the Human Sciences」 まだ小学生の頃だったと思うが、サバンナに住む野生動物を「偶蹄類・奇蹄類」と分類して紹介しているテレビ番組を、不思議に思いながら眺めていたことがあった。ひづめが偶数…

ミシェル・フーコー「幻想の図書館」

Michel Foucault「La Bibliotheque Fantastique」 仕事の合間の待機時間に、すちゃっと図書館に入って読んだ。 フロベール「聖アントワヌの誘惑」をめぐる論考。

ジャック・デリダ「精神分析の抵抗 フロイト、ラカン、フーコー」

Jacques Derrida「Resistances of Psychoanalysis」 わたし心理学って好きじゃない。心理テストとか夢判断とか答えると、あなたは本心ではこう思っています、っていう結果を告げられるでしょ?そんなこと言われてもさ、思ってないなんて言えないよね、だって…