2006-01-01から1年間の記事一覧

「未来」2006年12月号(No.483)

「殺して終わり」の欺瞞性 についての覚え書き: 12/30にイラク元大統領の死刑が執行された。この年末に…というか、いや年末は暴動が起きにくいのか、ああそれに中間選挙の敗北とか、などと思いつつ、とは言っても兎に角もイラクは占領された訳ではなかった…

安野モヨコ「働きマン(1)〜(3)」

普通に面白い。(という言い方は否定的なニュアンスを含まないと私は思う。)表紙を見て、コピックらしい彩色だなぁなどと考えた。

G・ガルシア=マルケス「百年の孤独」

1999年翻訳版で読みました。これはおもしろいです。古事記とか太平記とか平家物語とかの類いの、一族の盛衰・大きな物語が描かれた小説ですが、小説全体の構造が円環をなしていて、読了と共に小説世界までもが一陣の嵐を巻き起こして消失します。いろいろ不…

モーリス・ブランショ「死の宣告」

河出書房新社「河出海外小説選21」1981年再版で読んだ。訳は三輪秀彦。収録は「死の宣告」「永遠の繰言(牧歌、窮極の言葉)」。絶版だが、下の書籍に全編収録されている模様。 表題の作とても良かった、文学的に傑作かと言われると多分違うんだけれど、好き…

二ノ宮知子「のだめカンタービレ(16)」

前巻に引き続き借りました。「のだめだけ貸すのも何だしと思って、働きマンも貸そうと思って探したんだけど見つからなくて」と言って、安野モヨコの替わりにガルシア=マルケスを差し出す、そのスーパーフラットなセンスはかなり良いと思います。

港千尋「自然 まだ見ぬ記憶へ」

インターコミュニケーション誌の連載を纏めた本。自然と人間活動の関係を、何章にもわたり視点を変えながら啓発してるような体裁。本の性質上は仕方のないことだけど物足りないです。多少の興味は持っていた分野だったからか、この章の話はあの批評の延長だ…

舞城王太郎 「SPEEDBOY!」

舞城くんの単行本すごい久し振りと思ったら「みんな元気。」以来の2年振りだというから恐ろしい。で講談社BOXという新シリーズの鏑矢企画らしいのだが、第一弾のメンツ見て、太田克史さんは一体誰にこのシリーズを買わせようとしてるのかとフシギな気持ちに…

「未来」2006年11月号(No.482)

雑賀恵子さん「Sein und Essen 8 骸骨たちの食卓」が面白かったですよ。マフマルバフの「サイクリスト」とかスティーブン・キングの「死のロングウォーク」とか、見世物としての熱狂が過ぎてもなお行為を止めない行者、そんなのです。

「未来」2006年10月号(No.481)

東宝系の映画館の徒歩圏内に居着いてからようやく映画館に足を運ぶようになったものの、一朝一夕で映画通になるわけもないし、映画を見る作法もわからない。藤井仁子さんのスピルバーグ論はとても興味深いけれど、映画に批評性を求めるという視線を必ず存在…

「現代思想 10月臨時増刊 ジュディス・バトラー」

論者によって意見のブレや用語訳出の仕方が違うあたりが、現在進行形で記述される哲学のおもしろい側面だと思う。そしてまた、現代社会や政治に関するコミットメントが要請されることも同様に。チョムスキーやサイード、ソンタグからは遠く世代の離れたバト…

菊池直恵・横見浩彦「鉄子の旅」(1)〜(5)

東京から横浜方面に出かける時に、品川のホームに入ってくる電車が快速アクティーだとそれだけで嬉しくなります。

カトリーヌ・マラブー 「わたしたちの脳をどうするか」

わたしがまだ幼い頃には、身体における心の存在場所は心臓だと言われることもあった。感情の昂りに呼応する臓器。ところがいつの間にか心臓は代替可能な存在になり下がり、心停止は人の死とは見なされなくなった。そして身体の未知領域であり今のところは移…

ランボオ/小林秀雄訳「地獄の季節」

「強気にしろ、弱気にしろだ、貴様がそうしている、それが貴様の強みじゃないか。貴様が何処に行くのかも知りはしない、何故行くのかも知りはしない、ところ構わずしけ込め、誰にでも構わず返答しろ。貴様がもともと屍体なら、その上殺そうとする奴もあるま…

ソポクレース「アンティゴネー」

オイディプスの父殺し、オイディプスの子らの刺違えはそれぞれ、逃れられなかった呪いの結果とも言えるけれど、娘アンティゴネーの自殺は彼女自身の強い意志の結末だ。自らが選びとった悲劇であった、これが大きな分水嶺になっているように思えた。 アンティ…

マックス・ヴェーバー「職業としての政治」

1919年1月、第一次世界大戦敗戦後のドイツで開かれた学生のための講演会録。論旨がとても明瞭で分りやすいです。政治が暴力を基盤としていること、また施政者の類型や出自の変遷、コーカスなど選挙システムについて、政治とは本来相容れない倫理の問題につい…

「未来」2006年9月号(No.480)

松田美緒さん「音を紡ぐひとたち」が毎回なんだかいい雰囲気だ。編集してる人の狙い通りの効果を楽しんでるだけのような気がしなくもないが、紀行文風にしちゃ出逢った風景なり人物なりの写真がでてこないのが物足りないのか否むしろいいのか? 内藤寿子さん…

大江健三郎「われらの狂気を生き延びる道を教えよ」

5つの短篇を詩という視点でひと纏めにした本。多少の例外はあれ短篇は面白いというのが大江文学の原則かと(笑)。初期大江の精緻な暑苦しさと、中期以降の谷間の村の面影とが共存してる、幸福な時代です。 大江をある程度の量読み進むと、イーヨー・ギー・…

中島らも「今夜、すべてのバーで」

人にドラッグを辞めさせる理由はそれが違法だからというので十分だ、自分はコントロールできてるからとかタバコと大して違わないからとかいう言い訳に怯むな。と話した人のことを久し振りに思い出した。←その人はバッド・トリップまで経験済。結局のところ体…

西尾維新「DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件」

西尾維新がノベライズすると聞いた時点ではあの冗長な心理戦を書くのに最適な人材だとか思ったが、結局はDEATHNOTEから設定だけを拝借した全く別モノになってしまったようだ。原作が好きで手にとる人にとってはこれは酷。布装幀に銀文字はやめて普通にノベル…

ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟(中)〜(下)」

小説というよりは登場人物に仮託したドストエフスキーの告解を聞いてる気分ナリ。ある特定の個人の中にひそむ錯綜した思想の吐露というか…分裂気味な自分の思考をめいっぱい喋りまくるために用意された人物の布陣に見えるのだよ。だからこそ、全編、ストーリ…

「未来」2006年8月号(No.479)

丸山眞男没後10年特集。市村弘正さんの「思考の起点について」がマイベストでした。一本読んでみたくなるよね。 それにしても「私と丸山眞男」みたいなテーマを一般人(筑紫哲也のこと)に書かせることができるってすごいことだ。知的ファッションとして流行…

ジョルジュ・バタイユ「眼球譚(初稿)」

六本木ABCで「死者の書・身毒丸」と同時に購入したのだが、よくもまあこんなケッタイな2冊を選んでしまったものだ。両者とも異常性愛ですか。←まあこういう言い方をするには文学性が高すぎるんだけど。 そして両者とも「物語本編とそれに関する作者の語り」…

折口信夫「死者の書・身毒丸」

戯曲に疎いということをまた思い知らされたんだが、蜷川幸雄が底にした「しんとく丸」は寺山修司と三島由紀夫らしかった。でも折口の「身毒丸」はもちろん「死者の書」も素晴らしくて、地下鉄に揺られながら読んでて何度も乗り過ごした。特徴的な擬音語擬態…

アイスキュロス「テーバイ攻めの七将」

オイディプス周辺の悲劇を、計らずしも時系列に沿って読むことになりそうな模様。この話は、彼と彼の母との間に生まれた彼の兄弟の話。ややこしいな。…オイディプスにとっては弟にあたる、オイディプスの子供達の話です。独白劇として聴いたら面白そ。

「未来」2006年7月号(No.478)

映画ネタが多くてよく判りません…のでひとまず退却〜! (後日追記?)

ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟(上)」

なるほど普遍的なテーマを扱ってるからあまねく人気があるってわけ。金原ひとみさんが(上)読んで感じたらしい程にはツマラナクなかったけど、私の期待がいかんせん過剰で……「!」の頻出するヒステリー会話に辟易したり…召使いごときの来歴はスキップしよう…

米澤穂信「春期限定いちごタルト事件」

高校に入学したばかりの小鳩くんと小佐内さんが、身近に起こるちょっとした謎(同級生のバッグが紛失した!とか)を解決するミステリ。謎解き能力に優れていることを隠し小市民たらんと苦慮する2人なんだが、解決してく事件がもともと、人の死なない小市民的…

W.B. イェイツ 「薔薇」

わたしは接吻をして嘆息つく。 坊やが大人になったなら 坊やの顔が見れなくなり、 きっと、わたしは淋しかろう。 - われは悦んで生を繰り返すものだ、 あらためて、更にまたあらためて。 たとい、盲をめった打ちする盲の、その曚昧の溝の 蛙の雄精卵に落込む…

二ノ宮知子「のだめカンタービレ(15)」

妹のカレシに借りました。

フラナリー・オコナー「オコナー短篇集」

良質の文学作品に触れたときの静かで豊かな時間があった。すばらしいっす。不具者…奴隷…プアホワイト…田舎者…阿呆…弱者を見つめる冷徹な眼。オコナーは24歳から39歳で死ぬまで、紅斑性狼瘡(こうはんせいろうそう、脚と顔の下半分の骨が柔らかくなる不治の病…