2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

杉浦勉「霊と女たち」

スピリチュアルなんて言うといかんせん胡散臭いし、フェミニズムなんてのもついつい敬遠してしまう。それなのにこの「霊と女たち」、書店帰りに立ち寄った日曜のSTARBUCKS COFFEEで、ワンシッティングで読了してしまった。面白いなあ。異端審問とか伝奇とか…

ジャン・ボードリヤール「完全犯罪」

Jean Baudrillard「The Perfect Crime」 この本をわたしに薦めた友人は、ほとんど推理小説を読まないのらしい。そんな彼に推理小説を1冊薦め感想をきいたところ、思いもよらない返答があった。ミステリの原則である、一番重要なことを最後の最後まで隠蔽して…

ドリス・レッシング「破壊者ベンの誕生」

Doris Lessing「The Fifth Child」 ドリス・レッシングは2007年のノーベル文学賞受賞者だが、純文学らしからぬ装幀にひかれて読むことにした。 時代遅れの感性をもつカップルが、ロンドン郊外の分不相応に大きな家で、あたたかい大家族をつくりあげることを…

川上弘美「溺レる」

川上弘美は、書かれたものについて、とても繊細だ。 これは短篇集だが、すべての短篇について、登場人物の名前をわざわざカタカナ表記にしているのが、それに気付くきっかけになった。とりあえずはカタカナ表記は異質に見えて、文章のなかで人物が際立つとと…

川上弘美「パレード」

「センセイの鞄」のツキコさんとセンセイが、畳にねそべりながらよしなきことを語る。ふたりとも淡々としているけど、一緒にいるここちよさ、息のあった掛け合い、羨ましいくらいだ。改めて思う、人と人との関係を説明するのに、恋愛か友情かなんて、そんな…

クロード・レヴィ=ストロース「野生の思考」

Claude Lévi-Strauss「The Savage Mind」 フランス語の原題は「La pensée sauvage」、penséeは草花のパンジーと思惟思考の両方を意味するのだそうだ。この本がはじめて出版された1962年当時はまだ、オーストラリアやアメリカの先住民族に対する視線には偏見…

田中純「都市の詩学」

暗闇でつぶやくように喋る声と、スクリーンに投映されるいくつものイメージ。今はもう取り壊された大学図書館の講堂で、結局、学期の最後まで講義に通いつづけた数人の中に、私は含まれていた。期末評定の対策を質問してきた見知らぬ受講仲間に答えたとおり…

乙一「失はれる物語」

せつなさと優しさに満ちた短篇集。短く要約すると何故か陳腐になってしまうので、内容紹介できないのが残念。 既読のかたへ、彼女は彼にモールス信号を教えるべきだったと思いませんか? 文庫版は以下8編。 ・Calling You(映画「きみにしか聞こえない」原作…