2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

スラヴォイ・ジジェク「ラカンはこう読め!」

ラカン関連の本を読んでいて曖昧に理解してた箇所がいくぶんすっきりした。ラカン入門書・紹介書というよりは、サブテキストとしていい本だなという印象。 ラカン理論のわかりにくい概念「象徴界・想像界・現実界」をとてもうまく表現していてまずそれが嬉し…

J・M・クッツェー「少年時代」

南アフリカのノーベル賞作家クッツェーの自伝的小説。彼の他の小説は舞台が南アフリカ内であっても不思議と南アフリカの物語を読んでいるという気にさせなくて、立ち戻る先は常に普遍だった。けどこの物語ではさすがにアフリカーナーもカラードも、農場も狩…

ウラジーミル・ナボコフ「透明な対象」

やばい。超いいですナボコフ。 翻訳に対して彼がすごく口やかましかったのも理解できる。暗喩に満ちてて多分そのごく一部だけしか私は気付いてないんだろうけど、それに気付いた瞬間自分の口からウヒっていうシニカルな笑いがマジで漏れたのが可笑しい。それ…

デイヴィッド・スタウト「カロライナの殺人者」

アメリカ探偵作家倶楽部最優秀処女長編賞受賞作。初版1988年です。ノンストップ・ミステリでもあるけど非常にジャーナリスティックにアメリカの傷を描いている。 南北戦争直後の南部に起こった白人少女2人の殺人事件の犯人として、14歳の黒人少年が死…

田崎英明「無能な者たちの共同体」

前の日のメモ見ててあー前向き人間て何でもこう捉えちゃうのねー、と嘆息しました。芳しからぬことはすべて正しきことの反動であってしかもそれすら肯定しうる、という。でもそうじゃないでしょ、ってこの本読んだ後自分の文章見て思った。 「空の青み」にお…

ジョルジュ・バタイユ「空の青み」

自分があまりにも健全すぎたり前向きすぎたりするのに辟易すると、バタイユとか。 彼の場合、生への嫌悪感や健全さへの反発が、死への志向や性の乱痴気騒ぎに向かってると思うのだ。本書中の「私」は自分の堕落に女性を巻き込みたがるし同類を求めているし、…

アントニオ・ネグリ+マイケル・ハート「マルチチュード(下)」

先週末に開催されたシンポジウム「新たなるコモンウェルスを求めて」に行ったよ。ネグリさんは電話対話のみで、登壇者は姜尚中・上野千鶴子・鵜飼哲・石田英敬。この4者だと圧倒的に上野さんに敬意を払う雰囲気になるようで、しかし彼女はさほどネグリに詳…