mysteries

スタニスワフ・レム「ソラリスの陽のもとに」

Stanislaw Lem「solaris」 ソラリスが発見されたのは私が生まれるよりも百年も前のことである。この惑星は赤と青の二つの太陽のまわりをまわっている。発見されて以来四十年以上もの間、この惑星に近づいた宇宙船は一つもなかった。当時にあっては、二重星を…

トム・ロブ・スミス「チャイルド44」

Tom Rob Smith「Child44」 冷戦を知らない世代(1979年生)が描く旧ソ連スパイ物(正しくは国家保安省)という触れ込みに惹かれて読む。ヒーローとヒロインが美男美女というのは定番だが、この2人が最後まで愛し合わないというのは珍しい。2009年このミス1位…

湊かなえ「告白」

「道を踏み外して、その後更正した人よりも、もともと道を踏み外すようなことをしなかった人の方がえらいに決まっています。」「三年生の担任を持つと、受験を前にして『この子はやればできるんです』と保護者の方からよく言われるのですが、……『やればでき…

レイモンド・チャンドラー「長いお別れ」

Raymond Chandler「The Long Goodbye」 「結婚のプレゼントか」 「ショー・ウィンドーで見つけたから買ったのといった具合のね。ぼくは何も不足のない人間なのさ」 「すてきな車だ。値段は聞きたくないがね」 彼はちらっと私の方を見て、ぬれた舗道に視線を…

ピーター・ラヴゼイ「偽のデュー警部」

Peter Lovesey「The False Inspector Dew」 英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー受賞作。知人の推薦本です。 物語は前半・後半・オマケに分かれていました。 前半は、歯科医ウォルターが愛人アルマと共に、妻殺害の計画立案をするに至るまでのメロドラマ。殺…

サラ・ウォーターズ「半身」

Sarah Waters「Affinity」 日本でもベストセラーになっていたが、そりゃ確かに面白い。 ミステリというのは、登場人物や語り手(マーガレット・プライア)よりも早くに真実に気がついたら、そこから先はスリラーとして楽しむことになる。今回は、後ろ40%を…

米澤穂信「インシテミル」

仕事で席を並べている人が偶然にも森博嗣をかなり読んでいたと知った時点で物理トリックの素晴らしさと大事さを即座に大力説してしまった私はもちろん、ネイティブアメリカンの人形と言われただけでははぁんミステリファンはさぞやにやりとしたでしょうなと…

H.F.セイント「透明人間の告白(上)(下)」

H.F.Saint「Memoires of An Invisible Man」 事故で透明人間になってしまった男が、現代のニューヨークを生きる。という以上のなんの話もありません。主人公は平凡な男で、でも何故か敵とのアクションは見事にこなし、いつもギリギリで追っ手をかわしつつ、…

スティーヴン・キング「ナイトシフト」

Stephen King「Nightshift」 昨晩はモダン・ホラーのおかげでよく眠れた。

伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」

うーん…黄金の竿を喪失した男が、それを置き去ってしまった孔を探し求めて放浪する話だ。あっちこっちで孔を掘りまくるんだけど、結局彼がそれを見つけたのは、自分の肛門だった…というのは嘘八百なんだけど。ドゥルーズ読んでてアンチ・ファルスに染まって…

P・D・ジェイムズ「女には向かない職業」

中学生の時の初読以来もう何回も何回も読んでるミステリだけど、今回はじめて、自分が何故コーデリア・グレイに親近感を抱いてきたのか判った気がした。彼女の持つ孤独さが、私のそれと似ているからだ。自分の考えていることと自分の言動との差がひらけばひ…

デイヴィッド・スタウト「カロライナの殺人者」

アメリカ探偵作家倶楽部最優秀処女長編賞受賞作。初版1988年です。ノンストップ・ミステリでもあるけど非常にジャーナリスティックにアメリカの傷を描いている。 南北戦争直後の南部に起こった白人少女2人の殺人事件の犯人として、14歳の黒人少年が死…

ピエール・バイヤール「アクロイドを殺したのはだれか」

アガサ・クリスティーがミステリの正統派だと評されているのを聞くと、わたしは未だに困惑する。そう言うには彼女は奇抜すぎると思うのだ。 一般的に、ミステリの最後で暴かれる犯人は必ず、そのミステリの読者が想像もしなかった登場人物である。しかしクリ…

アガサ・クリスティ「アクロイド殺害事件」

アクロイド殺しの真犯人は別にいるらしい、という本を次に読むので、自分でも見当つけとこうと思って再読した。 「アクロイド殺害事件」は、ある登場人物の手記という体裁をとっている。語り手は、断片的な知識しか持たないし、公平な目で事件を眺め渡すわけ…

ジョージ・オーウェル「動物農場」

社会的劣化が著しい、この作品は既に乗り越えられた傑作だわ、などと辛辣なこと考えながら読んでたわりには地下鉄2駅乗り過ごした。どういう性格の役者を配するかとか、伏線のひき方とか、ブラックなオチの付け方とか、今のミステリ(←広義)ではかなり多様…

カトリーヌ・アルレー「死の匂い」

怖い怖い怖い怖い、アルレー怖い! 富も美貌も手中にしている高慢な悪女が、自分が操縦しているはずの男の知略に序序に墜ちて破滅(自滅)するまでのストーリー。「わらの女」と基本的な展開は同じなんだけど、何が怖いって、彼女の勝機が削がれて行くにつれ…

鏡明「不確定世界の探偵物語」

編集やってる人と書店に行くと、長時間滞在の代償なのかときどき文庫本をプレゼントしてくれる。ありがとうございます。たいていは私が自分で選書するんだけど、この本に限っては、あなたはこれを読んで、て言って渡された。和製SFです。大森望さんが解説を…

スティーヴン・キング「ハイスクール・パニック」

あたかも化学反応のように、キングを読めば私はこういうふうに楽しむことができる、というその予想は決して裏切られることがない。物語の設定がとても単純で、謎もほとんど設定されず、派手なアクションも起こらないのに、これだけ先へ先へと読ませてかつ重…

レイモンド・チャンドラー「湖中の女」

しょっぱなで怪しいと睨んだ設定が、やはり最後にプロットの要になっていた。多分それに気がつく読者は多かろうが、こうまで引っ張るチャンドラーに感服。

P.D.ジェイムズ「女には向かない職業」

再読率ナンバーワンの本だ。初読時はたしか中学生だった当時の私にとってはコーデリア・グレイは大人の女性だったのだが、いつの間にか年齢を追い抜いていた。わたしが小説の主人公に共感できるという極めて稀な例だ。若くて可憐、怜悧でタフ、倫理的で革命…

A・J・クィネル「燃える男」

例によって知らなかったけど、映画化されていたらしい。華々しい戦歴を持つがすっかり燃え尽きた傭兵クリーシィが、ある少女のボディーガードをしている最中にその子を殺されてしまい、復讐をするという話。 いいストーリーだけど、微妙に私好みの埒外だった…

ジェイムズ・P・ホーガン 「星を継ぐもの」

ホーガン最高!ハードSF万歳!最初に評判聞いてからもう10年以上経つけど、そしてその間にはツマンナイSFにいくつかひっかかったり、紀伊國屋書店でガキの「ホーガンはもう全部読んじゃったよ〜」などという耳の痛いセリフを耳にしたりもしましたが、でも読…

レイモンド・チャンドラー「さらば愛しき女よ」

言わずと知れたハードボイルドの金字塔。さすが古典です素晴らしい。 とにかくフィリップ・マーロウがカッコよすぎ。彼はストーリーの中で幾人ものならず者や悪党に会い、生命の危機に度々見舞われる、というよりその状況を厭わない、が、誰もが彼にとどめを…

米澤穂信「春期限定いちごタルト事件」

高校に入学したばかりの小鳩くんと小佐内さんが、身近に起こるちょっとした謎(同級生のバッグが紛失した!とか)を解決するミステリ。謎解き能力に優れていることを隠し小市民たらんと苦慮する2人なんだが、解決してく事件がもともと、人の死なない小市民的…

ジェイムズ・エルロイ「ブラック・ダリア」

凄いイイ!!!この本の評判もう10年以上前から聞いてたのに、何で今まで読んでなかったんだバカじゃないか?いやだいたいにおいて海外ミステリ探す時に文春文庫の棚はあまり見ない上、この本はペーパーバック・ミステリとしてはボリュームがありすぎたんだけど…

R.D ウィングフィールド 「クリスマスのフロスト」

カート・ヴォネガット・ジュニア「タイタンの妖女」

P.D.ジェイムズ「女には向かない職業」

森博嗣「詩的私的ジャック」

森博嗣「笑わない数学者」