P・D・ジェイムズ「女には向かない職業」



中学生の時の初読以来もう何回も何回も読んでるミステリだけど、今回はじめて、自分が何故コーデリア・グレイに親近感を抱いてきたのか判った気がした。彼女の持つ孤独さが、私のそれと似ているからだ。自分の考えていることと自分の言動との差がひらけばひらくほど孤独は増える一方で、しかもその差が意識して作られるものである以上、孤独も必ず認識されてしまう。意図した親しみ、装われた冷静、もちろん決壊してしまうこともあって、コーデリアダルグリッシュの前で叫び泣き崩れたけれど、泣かずにはいられるかってのよ。この本では、彼女が親しみを感じる人はひとりも生きて登場しないのだ。
そして探偵業務のために訪れたケンブリッジ、彼女は予定していた進学をあきらめた経緯があるのだが、自分と同じ年齢の学生たち、軽薄だが情熱に満ちた彼らに惹かれることがあっても、彼女は職業意識から親しくなることを禁じてしまう。そんな彼女にとって、ケンブリッジの町もカレッジもそこでの生活も、決して手の届かない楽園として限りなく幸福に満ちて美しい。


ところで今日5/13は誕生日です。31歳!