乙一「失はれる物語」



せつなさと優しさに満ちた短篇集。短く要約すると何故か陳腐になってしまうので、内容紹介できないのが残念。
既読のかたへ、彼女は彼にモールス信号を教えるべきだったと思いませんか?


文庫版は以下8編。
・Calling You(映画「きみにしか聞こえない」原作)
・失はれる物語
・傷(映画「KIDS」原作)
手を握る泥棒の物語
・しあわせは子猫のかたち
・ボクの賢いパンツくん
・マリアの指
・ウソカノ


絵本「くつしたをかくせ!」の著者経歴があまりにも冴えていたので以下に抜粋。
1978年10月21日、福岡県で生を受ける。誕生した時刻に、産婦人科のある地域一帯を突風が吹き抜けて大量の白い羽根が空から舞い落ちてきたという。そのせいで交通網はストップ。事件は朝刊に掲載された。生後数カ月で言葉を話し始め、1歳の誕生日には聖書を丸暗記。2歳の誕生日には九九のかけ算ができるようになり、3歳の誕生日には幼稚園の演劇でマクベスの演出をやる。4歳の誕生日にピアノを習い始めたところ、最初からなぜかモーツァルトの曲を知っている自分に驚く。5歳の誕生日、教会の前でだれかに呼ばれた気がして振り返るが、マリア像があるだけでだれもいなかった。6歳の誕生日、家族でサファリパークに行ったところ、ライオンが周囲に集まってきて服従のポーズをとる。7歳の誕生日、暴走馬に頭を蹴られる。それ以来、普通の子になってしまったが、むしろ両親に喜ばれる。17歳のときに「夏と花火と私の死体」で小説家デビュー。その後「GOTH」「ZOO」などを書き、生き恥をさらすことになる。最新作は「失はれる物語」。