ソポクレース「アンティゴネー」



オイディプスの父殺し、オイディプスの子らの刺違えはそれぞれ、逃れられなかった呪いの結果とも言えるけれど、娘アンティゴネーの自殺は彼女自身の強い意志の結末だ。自らが選びとった悲劇であった、これが大きな分水嶺になっているように思えた。
アンティゴネーは、自らの父の妹であるという錯綜した家族関係を持ち、家制度を生まれながらに超越している。そんな彼女が、国の令を無視し死者を弔う、反体制的な行為に出たことの意味は、確かに大きく捉えられていいことだろうし、死者の弔いというのが体制の中ではどう振る舞われるべきなのかが考えられるのは自然だ。
敵味方にわかれた兄弟の、敵になった片一方の埋葬は行わないという国令、これにアンティゴネーが反逆すること。全ての人間を覆い尽くす(というか、生物の定義でもある?)死の共同体に対する敬意や、血の繋がりという民族的な連帯が社会構造に勝る瞬間、など連想されるものは多い。
…というようなことを、バトラーさんの論旨忘れたなぁと思いながら書いてるので、そのうち読み直そうと思います。クイアって何なんだ問題もほっといたままだし、現代思想で特集組むんなら、良いガイドになってくれることを祈ります。