2007-01-01から1年間の記事一覧

大森望・豊崎由美「文学賞メッタ斬り!2007年版/受賞作はありません編」

トヨザキ社長ご健在で何より。毒舌あいかわらず走ってます。 評者が身勝手な思い入れたっぷりに語りまくるタイプの書評がわたしは大好きなのですが、…例えば斉藤美奈子「読者は踊る」なんか本屋待ち合わせの時間潰しの定番書になってましたけど←立ち読み御免…

夏目漱石「こころ」

罪意識を背負って生き最後に自殺した「先生」の、回想と遺書。でも暗鬱でねっちりとした場面は殆どなく、さくさくさくと短時間で読み切れる。 彼は遺書によって自らの罪を「私」に告白するのだが、自殺しようと決めたから告白を書いたのではなく、告白せずに…

ジェイムズ・ジョイス「ユリシーズ(3)」

妄想爆発しててある意味読みやすい。なんでこうも内省的なのか。

ジェイムズ・ジョイス「ユリシーズ(2)」

(1)はとりあえず注釈見ずで、いわゆる「意識の流れ」てのに揺られるがまま読んでいたのだけど、(2)に至って注釈見ても気が逸れなくなった。おもしろいなぁ。現代文学が読める、と感じられるようになってきた今だからこそ、この近代文学の金字塔、冴えない中…

二ノ宮知子「のだめカンタービレ(18)」

このマンガはもういつ終わってもおかしくない。あと半年で連載終了ね、て雑誌社が言ったら、いつでもまとめられそうな感じの展開しかもう残ってない。千秋くんはヴィエラ先生に会ってしまったし、のだめちゃんはしっかりしてきたし。そろそろのだめちゃんと…

よしながふみ「愛すべき娘たち」

たしか読んだのは6月ですが、一応メモ。よく考えたらこの漫画家さんの、「西洋骨董洋菓子店(1)〜(4)」「愛がなくても喰ってゆけます。」も読んでるわ。「大奥(1)〜(2)」も。 よしながさんの話し、「ものごとの本質を体得しててそれを語る人」ていうのが頻繁…

仲俣暁生/舞城王太郎/愛媛川十三「「鍵のかかった部屋」をいかに解体するか」

「鍵のかかった部屋」はポール・オースターの小説タイトルで私は未読なんですが、あーこーいうメタミステリなんだ、ということがこの本読んでて判ってしまったんですがそれはいいのでしょうか。まあいっか。多分読まない。オースターちょっとぬるいし。…とい…

ジェイムズ・ジョイス「ユリシーズ(1)」

おもしろいです。びっくり。 この新訳ユリシーズが出版されたとき、当時入学したばかりの大学の生協で単行本がバカ売れしてて(?少なくともフェアをやっていた)パラ読みはしたけど、よくわかんないって印象しかなかった。が、エー、このたび、旧い友人(し…

「未来」2007年6月号(No.489)

田中純さんの「残像のなかの建築」が復刊、サンクスです。 「宗教とグローバリゼーション」フリードリヒ・ヴィルヘルム・グラーフ 人間の経済活動と宗教的精神との関連を論じるもの、マックス・ヴェーバーに代表されるような分野、どうしても理解しがたい。…

ロジャー・ペンローズ「皇帝の新しい心」

私がまだ高校生のときに、朝日新聞の書評欄にこの本が取り上げられてたのを何故だかよく覚えてる。当時はカオス理論や超ひも理論、ホーキングやアインシュタイン、マンデルブロ集合やアルゴリズムといったやや学術的な概念が、一般にも熱狂を持って迎えられ…

「ユリイカ0705」

ル・コルビュジェ生誕120周年。去年末、着工から四半世紀を経て「フィルミニ教会堂」が落成したことも手伝って、ここ数ヶ月はあちこちでコルビュジェ特集が組まれている。 コルビュジェがそこでの余生を愉しんだ自作「カップ・マルタンの小屋(カバノン)」…

レイモンド・チャンドラー「湖中の女」

しょっぱなで怪しいと睨んだ設定が、やはり最後にプロットの要になっていた。多分それに気がつく読者は多かろうが、こうまで引っ張るチャンドラーに感服。

遠藤 秀紀「解剖男」

学問としての動物の死体解剖の話。研究手段が学問のジャンルとして成立するのもおもしろいことで、解剖学は、畜産学や遺伝学や医学や自然科学や博物学といった幅広い分野を繋ぐものだ。 海中哺乳類に特有の腎臓の形がゾウにも見られた、ということから、ゾウ…

ジャック・デリダ「他の岬」

…文化なしには、ただし他者の文化としての自己の文化、二重属格と自己への差異の文化としての自己の文化なしには、自己への関係も自己への同一化も存在しない。二重属格の文法はまた、ある文化はけっして唯一の起源をもたないことをも指示している。文化の歴…

「未来」2007年5月号(No.488)

あと1年で500号なんですね。 「パン=クレオールの概念」ロドルフ・エティエンヌ クレオール文化の連帯の大切さを論じたもの。クレオール語とは狭義には、植民地などでフランス語から派生した現地語、特殊なことに自然発生的な言語としてはかなり新しい、だ…

「大人の科学Vol.09 」

遅ればせながら。プラネタリウムなかなかきれいです。投影面(距離)のアスペクト比が高すぎるのと、窓の外が明るすぎる(9車線道路…)のをホントどうにかしたい。 夜空を見て星座を見分けることは、絶え間なく発声される言語を文節し意味を理解するのと同…

フラナリー・オコナー「賢い血」

偏狭なキリスト教説教師と彼を巡るひとびとの話。 大江健三郎がオコナーを好きなのが腑に落ちた。哀れまれるべき貧困層の滑稽さや、挙動の愚かさが淡々と語られていて、彼らを支配している因果律を読み取ることはとても困難で。救済を求めることに対して誠実…

「未来」2007年4月号(No.487)

「記憶に残る読書会」特集してます。白水社の「そこに関する郷土料理を楽しみながら各都道府県の作家の本を読む」読書会などいかにも楽しそう。京大SF研の活動なんかも、あぁ大学生のときにSF研かミステリ研入っとけば楽しかったろうと嘆息。 読書会やった記…

網野善彦「無縁・苦界・楽」

歴史関係の書物あまり読まないが、参考文献がとにかく多くなるのだなと単純に思う。現世との縁が切れた場所(無縁)である寺社の周辺に歓楽街が発達する理由としては、たくさんの参拝客に対して商売できるからか、行商の自由が保証される場所であるからか、…

赤坂憲雄「追悼記録 網野善彦」

「無縁・公界・楽」を読むための準備体操。

ピーター・ゲイ「神なきユダヤ人」

「A GODLESS JEW」は、フロイトの言葉からの引用。「ところで、敬虔な信仰者が誰一人として精神分析を創造しなかったのはなぜでしょう。そのためには完全に神なきユダヤ人を待たなければならなかったのは、どうしてなのでしょうか。」 本そのものは、フロイ…

P.D.ジェイムズ「女には向かない職業」

再読率ナンバーワンの本だ。初読時はたしか中学生だった当時の私にとってはコーデリア・グレイは大人の女性だったのだが、いつの間にか年齢を追い抜いていた。わたしが小説の主人公に共感できるという極めて稀な例だ。若くて可憐、怜悧でタフ、倫理的で革命…

斉藤環「生き延びるためのラカン」

読んでてニヤニヤ笑いがとまりませんでした。 パンチラとか腐女子とかのネタ、あるいはユングやフロイトのゴシップ、あるいは中井久夫やジジェクへの言及、等どんな人でも必ず何かには興味ひかれるだろうという動機づけがちりばめられていて、とにかく何とし…

ビチェ・ベンヴェヌート+ロジャー・ケネディ「ラカンの仕事」

感動的にわかりやすい!ラカン初心者に超オススメしたい。 第一に、ラカンの思想を各論文に分けてそれぞれ20ページ程度でコンパクトに解説してるのが良い。「胸像段階(幼児が鏡に移った自分の姿を見て、自分の外部に主体を形成するという論)」も「盗まれた…

「未来」2007年3月号(No.486)

文化の周縁的なエッセイが多い気がします、アフガニスタンとか民俗とか女性問題とか部落問題とか。

オノ・ナツメ「not simple」

2年前、ウェブコミック「comic seed!」に連載されていたのを読んでいた。同時掲載の他の作家がことごとくシュミにあわなくてもチェックし続けられていたのは、購読無料だったからとひとえに「not simple」が良かったからだった。この連載が完結した直後に出…

ジャック・ラカン「家族複合」

ラカン強化中。かなりランダムに選書したはずなのに、デリダもバトラーもジジェクもラカンをレファレンスしてるんだもんな、無視できない。でも「エクリ」には踏み切れない…。

A・J・クィネル「燃える男」

例によって知らなかったけど、映画化されていたらしい。華々しい戦歴を持つがすっかり燃え尽きた傭兵クリーシィが、ある少女のボディーガードをしている最中にその子を殺されてしまい、復讐をするという話。 いいストーリーだけど、微妙に私好みの埒外だった…

スラヴォイ・ジジェク「斜めから見る」

ヒッチコックを主な題材として、ラカン的にストーリーを分析し、登場人物がどのような作用を表現しているのかを論じている書。ヒッチコック映画はあまり見てないが、ヒッチコック的スリラー/サスペンス/ホラーは活字では大変なじみがあるので(中高生時代…

二ノ宮知子「のだめカンタービレ(17)」

ようやく千秋くんの父親が登場したけど、彼のファルスはホントの意味ではヴィエラ先生なんでしょね。ヴィエラの登場なくしてはこのコミックは終わらない。