ジャック・デリダ「他の岬」



…文化なしには、ただし他者の文化としての自己の文化、二重属格と自己への差異の文化としての自己の文化なしには、自己への関係も自己への同一化も存在しない。二重属格の文法はまた、ある文化はけっして唯一の起源をもたないことをも指示している。文化の歴史において、単一系譜学はつねに神秘化=欺瞞となるであろう。(8P)
とはいえ、ヨーロッパの文化的同一性を気遣う者にとって、ここでもまた他所と同じく命令は二重であり矛盾している。…二つの矛盾した法に責任を負うことであったり、二つの矛盾した命令に応答することであったりする責任=応答可能性を考えることは、不可能でさえある。たしかにそうだ。しかしまた、不可能なものの経験でないような責任は存在しない。さきに言っておいたように、責任はそれが可能なものの次元において果たされるとき、ある傾きに従いプログラムを実行しているにすぎない。…(34〜35P)
…ヨーロッパの同一性を脅かすものは、本質的にはヨーロッパを脅かすのではない。それは、<精神>の内で、ヨーロッパが責任を負っている普遍性を、ヨーロッパがその貯蔵庫であったり、資本であったり、首都であったりする責任を脅かすのだ。…(54P)


以上すべて引用。キーフレーズのみひとまず私的にメモ。翻訳者が豪華じゃないかと思って(高橋哲哉鵜飼哲)、読書体験としては前後脈絡なく読んでしまったので、あまり考えが広がらない。サイードオリエンタリズム論くらいしか思い浮かばん。