遠藤 秀紀「解剖男」



学問としての動物の死体解剖の話。研究手段が学問のジャンルとして成立するのもおもしろいことで、解剖学は、畜産学や遺伝学や医学や自然科学や博物学といった幅広い分野を繋ぐものだ。
海中哺乳類に特有の腎臓の形がゾウにも見られた、ということから、ゾウがかつては相当程度に海中に棲んでいたことが推察させられて、その推察が今後さまざまな傍証によって確認されていくのかもしれない、それはまさに、まだ死んだばかりの柔らかい死体にしか語らせることのできない、真実への道程だ。
そういえば「人体の不思議」展は、今頃どこを巡回しているのだろうか。かつてあの展示を見ていちばんショックだったのは、女性の胸部がまるで脂肪の塊がべったりとはりついたものだったことだった、なんていうか、造形上余分だ…。