light reading

松本昌次+上野明雄+鷲尾賢也「わたしの戦後出版史」

埴谷雄高、丸山眞男、野間宏、木下順二など戦後思想のトップランナーたちと仕事をした編集者、松本昌次氏の述懐録。上野氏と鷲尾氏が聞き手をつとめている。両名はそれぞれ大手出版社の元取締役だが、松本氏は小規模な出版社の立場で仕事を続けていて、まだ…

永井荷風「墨東綺譚」

ひとやすみ。永井荷風と聞いて「四畳半襖の下張」をまっさきに思い出すとは、私は相当腐ってます。エロが属性って訳じゃないんだね。

梨木香歩「家守綺譚」

村田エフェンディの友人である青年が、自分が住み込み管理する古い家に起こる奇妙なことどもを短文にて書き連ねた小説。以前、梨木の「沼地のある森を抜けて」を読んだときにうっとおしいと感じた、理屈っぽい側面が完全に払拭されている。理解を超えること…

梨木香歩「村田エフェンディ滞土録」

時代設定は明治期、村田青年が留学先のトルコで遭遇した出来事を描いた短篇連作小説。 明らかに異なるバックグラウンドを持つ者同士が、好ましい距離感を保ちながら関係を続けていくのが、読んでいてすがすがしい。実際いまこの時代であっても、外国人同士な…

西尾維新「不気味で素朴な囲われた世界」

最近おカタい本ばっかり読みすぎてたー、ってライトノベル読むとちょっと反省します。 3年前に読んだ「きみとぼくの壊れた世界」と緩くつながってる続編。クソッ、シリーズ化しないだろうと思って選書してたのに。病院坂黒猫ちゃんを再登板させたのがせめて…

中沢新一「ゲーテの耳」

軽い。軽やかです。 中沢新一は少なくともこの本では、西洋哲学を思考のツールとして用いていない。「アースダイバー」でもそうだった気がする。例えばエリアーデも中沢と同じくインド地域の宗教を研究しているけど、彼は、マルクスやヘーゲル等の西洋哲学を…

コクトー「恐るべき子供たち」

いまいちです。口直しに萩尾望都、読みたいなぁ。

「ちくま」2008年2月号(No.443)

穂村弘さん連載、経営者が戦国武将を心の手本にするという想像力の飛躍について、「キリン的」。キリンやゾウってかなり異常な造形で、現実にいるのが不思議なくらい。(だけどいる。)SFに出てくるエイリアンなぞ、キリンに比べたらかなりノーマルな生物だ。…

「ちくま」2008年1月号(No.442)

総合出版社のPR誌ってゴッタ煮だ。掲載されてるのの半分くらいは読むに耐えないか趣味が違いすぎてついてけない。でも趣味が違いすぎても、穂村弘さん。バカっぷりが冴えてて感銘を受けました。「教えてあげてもいいけど、あたしの仕事の邪魔しない?」ぽわ…

「未来」2007年12月号(No.495)

・ひとつもの凄いエッセイが収録されてるんですが、未来社さんマジですか?テーマはこれで良いとしても、内容と構成と文章そのものが雑誌全体のレベルから著しく離れているように思うんですが。れ、連載なのか。 ・小林康夫が連載「思考のパルティータ」で、…

「UP」2007年11月号(No.421)

東京大学出版会のPR誌です。いつもは未來社のPR誌を読んでるんですが、いちばんの違いはやはり理系を扱ってること。ゲーデルくらいなら「現代思想」でも特集するけど、線遠近法だの超新星だのはなかなか無理でしょう。一般向けの啓蒙書ならば兎に角、理系の…

「未来」2007年10月号(No.493)

読むのが遅すぎ。しつこいようですが、長谷川摂子さんのエッセイは良いです。 あと9月号の読書メモに関して、エリアーデに言及してた小説家は大江ではなく平野啓一郎でした。ブレイクと勘違いした。

私家版・世界十大小説(ノンジャンル)

先週から今週にかけて、はてな界隈で表題の件が流行ってたみたい。idiotapeさん私家版世界十大小説など。たまにはこういうのにも参加します。ここ数年以内に読んだもの限定で(昔のは印象が薄い)。 1. フラナリー・オコナー「オコナー短篇集」 2. 舞城王太…

梨木香歩「沼地のある森を抜けて」

友人が梨木はよく読むかもと言っていたので手にとりました。なので、語り手の女性と話中の友人男性とを妙に私と彼に投影しちゃっていけません。男に興味の薄い理性的に振る舞おうとするキャリア女性と、男性性に嫌気がさして中性的である研究者肌の男性なん…

乙一「小生物語」

もともとオツイチは好きです。とてもやる気のないデザインのウェブサイトに、とてもやる気のない彼の日記が掲載されてるのにある時気が付いて、掲載当時に読んでました。今はサイトは閉鎖されてるはずだけど、その書籍化です。彼のは「とるこ日記」も読んじ…

「未来」2007年9月号(No.492)

メモです。 ・エリアーデ読んだら面白いかも。前にエリアーデが気になったのは…好きだと言ってたのは大江だったか? ・またしても孫引き、献辞「君はいつも耳をかたむけてくれたね/そのとおりに書くよ」

「未来」2007年8月号(No.491)

…私は抽象的な論理をたどるときでさえ、それを誰がどんな顔をして言っているのか、出来たら見てみたい、という気持ちを払拭しきれない具体派なのだ。確かに、学問の成果は個人を超えてこそ意味がある。少なくとも真理は非人称。数学の定理を誰が言ったか、そ…

「未来」2007年7月号(No.490)

今頃になって7月号。読むの遅っ。倉石信乃さんの(というより中平卓馬の)、マス・メディアが伝えるドキュメントがモニュメントになってく、という言いが良い。

茂木健一郎「脳内現象」

クオリアの人です。(のだめの監修者のもぎぎとは別人物です。) もともと茂木さんに対してはかなり懐疑的だけど、啓蒙用の言説をあげつらって彼を批判しちゃうのはさすがに失礼すぎるので、まとまったのはどれ読んだらいいのかなと思っていたところ、斉藤環…

港千尋「映像論」

ミナトさんの文章は以前からあちこちで読んでいてすごく好きで、「映像論」やっぱり主著だし読もう読もうと思っていてようやく。写真家としての?感性的な描写や、史実に基づいた稠密な論、レトリックの巧みさ、広範な知識、などなどミナト節炸裂。すばらし…

大森望・豊崎由美「文学賞メッタ斬り!2007年版/受賞作はありません編」

トヨザキ社長ご健在で何より。毒舌あいかわらず走ってます。 評者が身勝手な思い入れたっぷりに語りまくるタイプの書評がわたしは大好きなのですが、…例えば斉藤美奈子「読者は踊る」なんか本屋待ち合わせの時間潰しの定番書になってましたけど←立ち読み御免…

「未来」2007年6月号(No.489)

田中純さんの「残像のなかの建築」が復刊、サンクスです。 「宗教とグローバリゼーション」フリードリヒ・ヴィルヘルム・グラーフ 人間の経済活動と宗教的精神との関連を論じるもの、マックス・ヴェーバーに代表されるような分野、どうしても理解しがたい。…

「未来」2007年5月号(No.488)

あと1年で500号なんですね。 「パン=クレオールの概念」ロドルフ・エティエンヌ クレオール文化の連帯の大切さを論じたもの。クレオール語とは狭義には、植民地などでフランス語から派生した現地語、特殊なことに自然発生的な言語としてはかなり新しい、だ…

「未来」2007年4月号(No.487)

「記憶に残る読書会」特集してます。白水社の「そこに関する郷土料理を楽しみながら各都道府県の作家の本を読む」読書会などいかにも楽しそう。京大SF研の活動なんかも、あぁ大学生のときにSF研かミステリ研入っとけば楽しかったろうと嘆息。 読書会やった記…

赤坂憲雄「追悼記録 網野善彦」

「無縁・公界・楽」を読むための準備体操。

「未来」2007年3月号(No.486)

文化の周縁的なエッセイが多い気がします、アフガニスタンとか民俗とか女性問題とか部落問題とか。

「未来」2007年2月号(No.485)

前にも書いたような気がするが、松田美緒さんの「音を紡ぐひとたち」良かったです(最終回)。情景の描き方が美しく、異国の人々に人間臭さや存在の身近さを感じさせてくれます。私が普段読むような類いのエッセイじゃないんだけど。できれば写真とリリック…

「未来」2007年1月号(No.484)

「夕鶴」てとても美しい話だと思う。 つう、が自分を助けた男の許を訪れ一緒に住まったのは、単に一緒にいたかったからとかお世話をしたかったからとか、思慕感情だったと思うのよね。それがやがて自己犠牲に発展する。好きな男に尽くしたいという気持ち。だ…

福原泰平「ラカン 鏡像段階」

フランスの哲学者(精神分析医)ラカンの紹介書。こういう紹介書読むのすごく久しぶりかも。ラカンの思想ばかりでなく生い立ちやら私生活やら、バタイユの妻との仲にまでふれているのが人間臭くて楽しい。ラカンを批判的に乗り越えるという気がまるでないの…

「未来」2006年12月号(No.483)

「殺して終わり」の欺瞞性 についての覚え書き: 12/30にイラク元大統領の死刑が執行された。この年末に…というか、いや年末は暴動が起きにくいのか、ああそれに中間選挙の敗北とか、などと思いつつ、とは言っても兎に角もイラクは占領された訳ではなかった…