「未来」2007年1月号(No.484)



「夕鶴」てとても美しい話だと思う。
つう、が自分を助けた男の許を訪れ一緒に住まったのは、単に一緒にいたかったからとかお世話をしたかったからとか、思慕感情だったと思うのよね。それがやがて自己犠牲に発展する。好きな男に尽くしたいという気持ち。だからこそ、男に鶴の姿を見られたからにはもう一緒にはいられない、というのが感情の自然な流れとしても理解されうると思うのです。いや、だって絶対恥ずかしいし。裏切られて切ないし。
ところが民話の「鶴の恩返し」は、まあタイトルが悪いのだ、恩返しに来た鶴が正体を見られて帰りました、みたいな明確な因果関係がある割になんで空に帰ったのかよくわからないことになっている。