梨木香歩「村田エフェンディ滞土録」



時代設定は明治期、村田青年が留学先のトルコで遭遇した出来事を描いた短篇連作小説。
明らかに異なるバックグラウンドを持つ者同士が、好ましい距離感を保ちながら関係を続けていくのが、読んでいてすがすがしい。実際いまこの時代であっても、外国人同士ならばまだ互いの異質さは予め了解されるけど、日本人同士、しかも机を並べて研鑽を積んだ者同士であってさえ、本来それぞれの人はあまりに異質なはずだ。その異質さに対して無頓着にならず真摯であって、どこまでその人の内面に踏み込んでいいのかという一線、尊厳に触れないことは、常に意識されなければ。相手に何でも話して欲しいと請い願い、無駄な邪推に努めることの愚かさよ。
とまれ、情趣のあるファンタジーで、読後感が心地よいです。コレ推薦してくれた友人によると、この次に「家守綺譚」を続けて読むと良いらしいので引き続きよろしくです。