吉増剛造「花火の家の入口で」



幼年のわたしがさくらを見た日。その日わたしは老衰
した。庭にひびいた紙笛の散る里、……わたしはわた
しの人生を思い出す。(時は、少しも、足りなくなか
った。百年がたち、百五十年がたっ、た、……。)