アゴタ・クリストフ「悪童日記」「ふたりの証拠」「第三の嘘」



第二次世界大戦下のハンガリー(と思われる)での、ある人物の少年期から老年期までを書き記した小説。3冊同時に読んでもそれほどのボリュームでなく(計6時間くらい?)一気に読んで良かった。さすがはHatenaQuestionでよく推薦されてる小説だけあって良書でございました。
悪童日記」:双子の兄弟が記している日記という体裁。感情を排した文章で描かれている。これ読んで名探偵コナンを思い出してしまう困ったちゃんです。大人の思考を大人の言葉で子供の声でもって話す感じ。子供にも大人と同じ思考があると思うけど、それを子供の言葉で話すことができないのが彼らの不幸であり、戦下という状況への対処として進んで「麻痺」を選んだこと故の彼らの苦悩だ。
「ふたりの証拠」:3冊の中で唯一第三人称で書かれてる。青年期、町が戦渦からの復興途上にある頃。自分では何も選択できない。起こることを引き受けて対処する。その都度最良の選択をしている筈なのにどうしてこうなってしまうのか、それは戦争で受けた傷を自分の力だけで癒すことができないから、とうの昔失ってしまった家族という存在を痛烈に求めているから、なんじゃないか。
「第三の嘘」:「信用できない語り手」問題が気になってたびたび理解に混乱が。ただいずれにしても戦下における真実なんだ。パラレルに起こりえた人生のどれもが救いがたく、漸く手に入れた安息も簡単に奪われ失ってしまう。いくらかでもマシかと思われる生活にしがみついて最期を迎えるのがいいのか、いっそ破滅してでも自分の受けた傷を治癒しようとするのか?