ノーム・チョムスキー「9・11-アメリカに報復する資格はない!」



9・11を安易にグローバリゼーションへの脅威、て感じに一般化してしまってたことに反省。ワールド・トレード・センターグローバル資本主義の墓標になったのはテロ行為があってこそだったし、何より犯人サイドはそのテロ行為が、アメリカ政府への政策批判に他ならないことを明言しているのだから。(それにしてもミノル・ヤマサキ気の毒。プルーイット・アイゴー団地は爆破されモダニズムの墓標になったし、いやな意味を付加された建築家になってしまった。)9・11以降中東諸国に対するアメリカの介入が甚だしいけど、テロに対してテロ(アメリカ曰く戦争)で応えるのではなく、犯罪者を罰しテロが起きた背景を考え改善するという冷静さが絶対的に必要。…ていうかどうせ景気や大統領選などの国内問題対策、また原油などの資源をめぐる利権を確保するための口実、てのが大きいんだろうが。産業革命ー資本主義の流れをフロンティア開拓によって引き寄せたことの限界が既に訪れていたんだろうかとかぼんやりと考えてみたりする。
本書で初めて知ったことひとつめ、アメリカが1980年代ニカラグアへ侵攻したことについて、国際司法裁判所が有罪判決と賠償金支払命令を出したのをアメリカは無視し、かつ安全保障理事会の「国際法を遵守せよ」という決議に対して拒否権を発動し、かつ国連総会でも同様の決議を反対したこと。ふたつめ、もともとビン・ラディンはじめアフガニスらが所属する軍事組織は、ロシアのアフガニスタン侵攻を誘い出す目的で、アメリカ等同盟国が設立した(と、カーター政権時の大統領補佐官が言った)ということ。
ところでチョムスキーさんは、ヒロシマに核爆弾が投下された時、周囲の人の反応が全く理解できなくて孤立したように思えたそうだ。当時15歳、そしていま活発な政治発言を繰り返すに至る。彼の専門である言語学的見地からではない視点から。ある意味凄い。サイードさんが彼こそは真の知識人だと褒めそやすのが判る。