フィリップ・ラクー=ラバルト/ジャン=リュック・ナンシー「ナチ神話」



ナチによる民族意識高揚がどのように起こったのかを考察した本。100ページに満たない。ナショナリズムの宣揚にはしばしば神話が使われる。太平洋戦争における靖国神社を思い浮かべると理解しやすい、戦死し英霊として祀られること。神話が模倣され(ミメーシス)国民の同一性が担保される。そして神話は現実化され実行されうる状態になる。芸術に昇華されたギリシア神話をナチはさらに血肉化しアーリア人の自意識へと高めた。「ナチ神話が何よりも「人種」の神話として規定されるのは、…神話一般を創造する潜勢力の神話であるからなのである。(本文引用)」人種主義など、全体性をただ一つの概念において説明できるその概念は、最終的にファシズムとなる。ファシズムの風景(建築)には、反復された全体性が透けて見える。その構造を持つ論理は、ファシズムに陥りやすいということだ。
この本の中では「peuples=民族」と訳出している、先日のラウンドテーブルでも、ナンシーさんが「デリダに、peuplesだとかよく(新しい?)語を使うねえ、と揶揄された」というお話をされていた。ラウンドテーブル終了後、同行した友人と近くの飲みヤで、「peupleって、multitudeのことなのかねぇ…」という話をしたんだが、どうやら違うっぽい。