ミルチャ・エリアーデ「マイトレイ」



20世紀を代表する宗教学者エリアーデの自伝的恋愛小説。彼がインドで学問を修めたときの師の娘マイトレイとの恋愛とその破滅を描いたストーリー。若々しい自意識のみなぎるエリアーデの、インド娘に対する偏見や憧れが溢れている。人が恋に落ちるまでのその人への好意悪意ないまぜの吐露が、説明可能性を放棄しているからこそ一層リアリティに満ちている。
恋愛なんて結末は必ずノワールだけど、破滅とそれまでの情熱を含むひとつの恋愛経験を2人でシェアしているはずなのに、それをどう保持していきたいかは、こんなにもくい違ってしまう。エリアーデは破滅直後も数十年後の再会時も、連絡をとろうとするマイトレイに向かい合うことはなかった。「わたしたちの恋愛をどうしよう?」彼らはどうすれば良かったんだ?