シェンキェーヴィチ「クオ・ワディス(中)」



皇帝ネロの時代のローマ歴史小説
恋愛小説の体裁で物語が進行するけど、まだ普及しはじめたばかりのキリスト教と、アポローンを賛美する思想とが、きれいに対比して描かれててそれが面白い。ジジェクを読んだ後だと、というより信仰と距離をとったフロイトラカン系を読んでると、ペトロニウスの「キリスト教を理解する、でも俺には合わない」といって拒否しつつも平等に扱う立場がいちばん好ましく映る。
この時代のアポローン賛美は男性の肉体賛美に端的に現れてて、彼らは湯浴みしてマッサージして香油塗って衣に襞つけて花冠してる。ハハハ。ほどほどでは飽き足りないということは喜劇的ですらあるけれど、こういう儀式を行うことで自らを神々に近づけるんだろう。日本の八百万の神々との間では考えられなかったことだ。
いつも行ってるジムで私がトレーニングしてる傍らで、はじめて来たらしい男性がトレーナーのガイダンス受けてて。「どの程度まで鍛えますかー?」「ソフトマッチョで。」というこの心理あたりがいちばん親近感あって好きだなあ。